それでも減らない敵の数。火器よりも、肉弾相打つ方が華々しく、魂の輝きを見せつける荒ぶる戦場。カメラは冷静かつ俊敏に雄々しき護り手たちの姿をとらえ、奮戦を激しい移動感とともに追っていく。 その中には『電脳戦機バーチャロン』のテムジン、『機動戦士ガンダムSEED』のストライクガンダム、『勇者王ガオガイガーFINAL』のジェネシック・ガオガイガーの姿も見受けられ、まさしく総力戦ムードがみなぎっている。 ロボのセレクションの勘どころの良さも伝わってきて、興奮を拡大する。そして、どうやらこれがシリーズの「ファイナル・バトル」であることがわかって来ると、胸の高まりをどうしても抑えることができなくなってしまう。 やっぱりロボットアニメには、機械のヒーローたちには、なにかしら心の高揚をもたらすエッセンスがあるんだな……と、期待とともに改めて思い知った。 このようなかたちでゲームの内容を総覧するようなプロモーションVTRの制作は、それ自体が非常に珍しいことだという。それはこの映像とゲームの作者たちが、ロボットアニメというジャンル全体に込めた熱量が可能にした結晶なのではないか。 この映像は、30年以上にも及ぶロボットアニメへの偏愛を凝縮し、複雑なときめきの感情をかきたてるものなのだ。
現在、5.1chのシステムは、記録媒体の高密度化と半導体チップの低価格化で、驚くほど安く家庭に設置できるし、安価なシステムでも意外なほど効果があるから、お持ちでなければぜひ試してほしい。 人間の耳は2つしかないのに、なぜ2chステレオでは不充分で6本ものスピーカーが必要なのか? 詳細な解説は専門書に譲るが、役目は大きく2つと理解している。まず、観客の身体をトータルに音場が取り囲むことで、圧倒的な臨場感を獲得すること。もうひとつは、主に0.1ch分つまり重低音を受け持つサブウーハーによって、音圧を体感として皮膚に伝えることである。 耳だけでなく身体全体を支配する皮膚感をコントロールすることで、映像だけでは不足しがちな臨場感、連続感を倍加させ、感情の起伏をストーリー展開にマッチさせることで、フィルム全体の効果を何倍にもするのが、5.1ch音響の役目だ。 サラウンドということで移動感、つまり物体が画面内で左・右あるいは奥・手前方向の移動に合わせ、効果音やセリフの定位を制御することが、5.1ch化の最大の効果と思われがちだ。しかし、音が360℃になったからといっても、映像フレームはあくまで観客前方に固定している。そのため、移動感よりは全体のサラウンド感のほうが重要とされている。 このPVのサラウンド音響も、冒頭から黒味に重なる重低音で期待感を盛りあげる使い方や、タイポグラフィ(字幕)出現の効果音、バトルフィールドの壮大さを表現する雰囲気音、ロボットがフレームインするより早く画面外の音を拾うなど、興味深い演出が成されている。そうした点でも、究極のエスカレーションにふさわしい迫力を、音響面からスーパーロボットの世界に与えてくれたものと言えるのではないか。
あえて言えば、野球の祭典「オールスター戦」に近い感覚のものなのだろう。しかも、ロボットやキャラクターだけでなく、世界観や人間ドラマ、ストーリーや作品の体臭さえも取りこんで煮込んだ壮絶なる闇鍋の中から生み出されるクロスオーバー感覚は、文化的にも非常に貴重なものだと思える。 αは完結するが、この貴重なるスパロボ文化は、先行きいったいどこまで進化し、何をわれわれに見せてくれるのだろうか? 今回のPV『Forever α』も、その果てしない進化のひとつの過程なのだろう。めくるめく興奮のエスカレーションを描いた映像と臓腑に染みるサラウンド音声に身をひたす中で、そんな見果てぬ夢の一端を目撃した。ぜひこれを、ともに体感して欲しい。